50歳からの便秘改善!消化器の専門医がすすめる食べ物&食べ方10選

加齢とともに急増する便秘。“女性の悩み”というイメージをもたれていますが、50歳を過ぎると男性でも便秘に悩む方が増えてきます。60代以降になると、腸内の悪玉菌が増え始め、その傾向は顕著になってきます。
「とはいえ、たかが便秘でしょ」と甘くみるのは禁物。ほうっておくと寿命が短くなるという驚きの研究結果も報告されています。
そんな、実は怖い便秘を改善する方法を、腸の名医である消化器病専門医の江田証先生(江田クリニック院長)に教えてもらいました。専門家がすすめる便秘改善に役立つ食べ物&食べ方を、知って、実践して、便秘知らずの毎日を送りましょう!

50代以降に多い便秘の原因と、その改善・予防方法

「便秘」とは、便を十分かつ快適に出し切れない状態をいいます。一般的には4~5日以上にわたって排便がないことをいいます。ただし、個人差があるので、1~2日排便がなくても不快感がなければ便秘とはいえません。その逆で毎日排便があってもすっきりしない状態なら便秘といえるでしょう。
50歳以降に多い便秘の主な原因は、加齢による腸内細菌の乱れや、腸の吸収力の低下、排便する力の不足によるものです。

[50代以降の便秘の原因]
・腸内に悪玉菌が増える
腸にはさまざまな腸内細菌が棲んでいますが、良い働きをする善玉菌が加齢とともに減少します。逆に有害物質を発生させる悪玉菌の割合が増えるため、便秘が起こりやすくなります。

・小腸で十分に栄養を吸収しきれなくなる
加齢によって小腸の吸収力が衰えることも原因のひとつ。本来、大腸に届くはずのない栄養素が流れ込むため、それをエサに悪玉菌が増えてしまうのです。

・便を出すパワーが不足する
便を大腸から送り出すための収縮運動(ぜん動運動)が、加齢とともに低下します。また、排便の際に必要な骨盤底筋や肛門の筋肉が衰え、便を出すパワーが不足することも原因のひとつです。

便秘を改善することはもちろん、今後便秘に悩まされないようにするためには、主に次の6つに気をつけて過ごすことが大切です。

①腸内の善玉菌を増やす食ベ物を積極的に摂る。
②運動で腸まわりの筋肉を鍛え、押し出す力を鍛える。
③マッサージで腸の動きを活発にする。
④毎日同じ時間、5分間トイレに入るよう習慣づける。
⑤ストレスをため込まないよう心がけ、ホルモン分泌を整える。
⑥7時間程度の睡眠で、腸の動きを整える。

6つの中でも、どんな方でも毎日の生活に取り入れやすい、「腸内の善玉菌を増やす食ベ物と、その摂り方」を次にご紹介します。

便秘を改善する食べ物&食べ方10選

江田先生が提唱する便秘改善の柱のひとつが、食事による腸内環境の改善です。腸内環境を整えるためには、腸内の善玉菌を増やし、元気にする食事が大切。中でもおすすめは、「発酵食品」「水溶性食物繊維」「オリゴ糖」「EPA・DHA」です。善玉菌が増えるためのエサになったり、増えやすい腸内環境をつくってくれます。




善玉菌を刺激して元気にする「発酵食品」
発酵食品とは、微生物(カビや酵母など)によって食材を発酵させた食品のこと。体内に取り込まれると腸内細菌が活性化し、善玉菌を増やしてくれます。また、乳酸菌やビフィズス菌は、腸内では善玉菌として働くため、直接善玉菌を取り入れることにもなります。

1:ヨーグルト
ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、腸内では善玉菌として働きます。消化を助けて腸の負担を軽減する「はちみつ」と一緒に摂るのがおすすめです。
ただし、ヨーグルトは商品によって含まれる菌が異なります。1〜2週間ほど同じ商品を食べてみて、自分の腸との相性が良い菌=ヨーグルトを2〜3種ほど見つけられるとベターです。

2:納豆
生きたまま腸まで届く納豆菌。熱にも胃酸にも強く、腸内環境を善玉菌が増えやすい弱酸性にしてくれます。
植物性の乳酸菌を含む「キムチ」と組み合わせるのがおすすめ。納豆の酵素が血液をサラサラにし、脳梗塞を防ぐ効果も期待できます。

3:みそ
みそは、発酵の過程で麹菌、酵母菌、乳酸菌が繁殖します。そのため、たくさんの善玉菌を一気に摂ることができる食品です。
みそ汁として、1日1杯が目安。具材は水溶性食物繊維が豊富に含まれる「海藻」や「ごぼう」がおすすめです。






善玉菌のエサになる「水溶性食物繊維」を含む食べ物
腸内の善玉菌は、水溶性食物繊維をエサにして、「短鎖脂肪酸」という物質をつくります。この物質には腸内の悪玉菌の増殖を抑え、腸内細菌のバランスを整える働きがあります。

4:わかめ
海藻独特のぬめり成分は、水溶性食物繊維のひとつです。カリウムやカルシウムなど、不足しがちな栄養素も摂ることができます。めかぶ、もずく、海苔も、食物繊維が豊富です。
わかめは乾燥タイプを常備しておき、みそ汁やサラダで摂るとカンタン。

5:ごぼう
善玉菌のエサになる水溶性と、便をかさ増ししてくれる不溶性の食物繊維をバランス良く含み、善玉菌のエサになるオリゴ糖も含まれています。
スープの具材にするのがおすすめです。水溶性食物繊維がスープに溶けこみ、効率よく摂ることができます。皮の付近に食物繊維や抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富なので、皮はたわしで軽くこそげ取るように下ごしらえしましょう。

6:もち麦
腸の免疫力を高めるβ-グルカンという水溶性食物繊維が豊富に含まれています。腸内の善玉菌を増やすだけでなく、腸内の免疫細胞を刺激してくれます。
白米に混ぜて、普段どおりに炊飯器で炊くだけ。もち麦入りご飯は食感がよく、食べる満足感を高めてくれます。






善玉菌のエサになる「オリゴ糖」を含む食べ物
オリゴ糖もまた善玉菌のエサとなり、腸内で善玉菌を増やす働きがあります。オリゴ糖は乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と一緒に摂ると、相乗効果で効率よく善玉菌を増やすことができるため、次で紹介するバナナをヨーグルトと一緒に食べるのもおすすめです。

7:バナナ
善玉菌のエサになるオリゴ糖と水溶性食物繊維がダブルで含まれているうれしい食材。高血圧を防ぐカリウムも豊富です。
シュガースポットと呼ばれる“黒い斑点”が皮に出てくる頃、消化を助ける酵素が増えてきます。常温に少し置いて熟成したものを、生でそのまま食べるのがおすすめです。

8:玉ねぎ
玉ねぎの甘み成分はオリゴ糖です。玉ねぎにはがん細胞の増殖を抑える効果があるポリフェノールも含まれています。
オリゴ糖は加熱しても破壊されません。サラダでも、焼いても、煮ても大丈夫。お好みの食べ方で摂ってください。






腸の中の炎症を鎮める「EPA・DHA」を含む食べ物
不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、体内で抗酸化作用を発揮。腸内の炎症を抑える働きがあり、腸内環境を整えるサポートをしてくれます。

9:青魚
「いわし」、「さんま」、「さば」、「あじ」には、EPA・DHAが豊富に含まれています。脂ののった旬のものを選ぶのがベストです。
生の魚を調理するのはもちろん、さばの水煮缶などのそのまま食べられるものでもかまいません。ツナ感覚でサラダに加えるのもおすすめです。

10:アマニ油
昨今話題のアマニ油には、α-リノレン酸が含まれています。α-リノレン酸は体内でEPA・DHAとして働きます。また、女性ホルモンにも似た働きをする「アマニリグナン」という成分も豊富です。
加熱すると酸化してしまうため、ドレッシングで摂るのがおすすめ。納豆やみそ汁に少し垂らして食べても良いでしょう。


「傾腸」で自分にぴったりの便秘改善食を見つけよう!

今回紹介した便秘改善のために役立つ食品は、あくまで「おすすめ食」。100人いれば100の違った腸内環境があるため、必ずしもすべての食品が、すべての人に対して効果を見込めるわけではありません。ポイントは、自分の腸にぴったりと合う食材を見つけることです。ぜひ、自分の腸の声を聞く「傾腸(けいちょう)」を実践し、自分の腸にぴったりの食材を見つけてください。

「傾腸」の方法
1 紹介した10の食品の中から、自分の食生活に取り入れやすいもの1品選ぶ

2 1〜2週間毎日食べ、いつ便が出たか、どんな便が出たかを記録

3 理想の便(表面が平坦で滑らか、バナナやソーセージのような形、においは強くない)が出たら、その食品は自分の腸にぴったりなもの
※改善しない場合は別のおすすめ食材を試してください

便秘を改善・予防できると、免疫力が上がって病気知らずの体へ導いたり、幸せホルモンが増えて心が安定したり、認知症の予防につながったり、肌の調子が整えば見た目に若々しくなったりと、心にも体にもいいことばかり。50歳を越えたら便秘に悩まない暮らしを送ることができるよう、できることから少しずつ始めましょう。

監修 - 江田 証(えだ あかし)

江田クリニック院長。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医。米国消化器病学会(AGA)の国際会員も務める。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していること世界で初めて発表。国内外から来院する数多くの患者さんを胃や大腸の内視鏡で診察しているカリスマ専門医。


   
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