
目次
- そもそも、免疫とは何のこと?
- 免疫の仕組みを知りましょう
- 免疫と腸の関係とは?
- 免疫機能をサポートする栄養素
- 腸内細菌バランスを整える食品と、理想的な食べ方
- 食事のほかにも、免疫機能をキープする方法はいろいろ
「免疫があると感染しても発症しにくい」「免疫力を上げましょう」などといわれていますが、実はわかっているようで良くわからないのが免疫とその働きではないでしょうか。
そこで、健康な暮らしに欠かせない免疫パワーを効果的に働かせるための方法を、感染症に強い体づくりを長年提唱してきた金城実先生(医学博士・一般社団法人日本予防医療協会代表理事)に教えてもらいました。必要な栄養素や効果的な食べ方を知って、生活習慣を見直しながら、免疫力を大いに活性化させていきましょう。
そもそも、免疫とは何のこと?

「免疫」の語源は、ラテン語の「免除、免れる」を意味する言葉。疫病(感染症)を免れる=免疫と呼ばれるようになりました。ウイルスやカビ、細菌といった病原体や、花粉などの異物から体を守る体内システムを指します。
さらに免疫は、生物がもともともっていて、異物が体内に侵入するといち早く排除する「自然免疫」と、感染した病原菌を記憶することで、再度同じ病原菌に出合ったときに効果を発揮する「獲得免疫」の二つに分けられます。通常、これらの免疫が互いに補完し合いながら、私たちの体を外敵から守ってくれています。
免疫の仕組みを知りましょう

病気の原因となるウイルスや細菌が体内に入ると、まず自然免疫が、続いて獲得免疫が働き出します。免疫細胞と呼ばれるものには、マクロファージやNK細胞、好中球、好酸球、B細胞、T細胞などがありますが、いずれも血液中の白血球に含まれていて、病原菌を消化・殺菌することで、体をガード。血行が良ければ、血液に乗って免疫細胞や抗体が体のすみずみまでいきわたります。
これらの免疫細胞が活発に働くと、新型コロナウイルスやインフルエンザに感染しても発症しにくい(症状が現れない)といわれているほか、自分の細胞が異常な変化をすることで発生するがん細胞に対しても有効なことが知られています。
生命活動において重要な免疫力ですが、知っておかなくてはいけないこともあります。それは、免疫が暴走することによって引き起こされる「サイトカインストーム」という状態があること。サイトカインとは、細胞から分泌されるタンパク質の一種で、他の細胞に警報を伝達する働きを担っています。このサイトカインが血液中に分泌されることで発熱や倦怠感、頭痛などが起こりますが、これは、体内で異常が起きていることを知らせて、体を防御するための大切なサインです。ところがウイルス感染などで炎症が増えるとサイトカインも大量に放出されて、過剰な反応を引き起こしてしまうのです。つまり、自分の免疫が自分自身を攻撃してしまうことが、症状の重篤化を招く要因に。花粉症も花粉に対する過剰な免疫反応のひとつであるのをはじめ、新型コロナウイルス感染症においても、サイトカインストームが多臓器障害を生じさせることで重症化する症例が報告されています。
免疫と腸の関係とは?
免疫細胞は体内のあらゆるところで病原体と闘っていますが、とりわけ集中しているのが腸管です。なかでも小腸内にある「パイエル板」というリンパ組織は、腸内細菌や発酵食品の中の微生物と接触することで、その奥にあるマクロファージやB細胞、T細胞などの免疫細胞をトレーニングして活性化してくれる頼もしい存在。
パイエル板をはじめとして、腸管上皮間リンパ球、粘膜固有層など、体内におけるおよそ60%の免疫器官が集まる腸ですが、これらの腸管免疫の発達や働きを維持するために、腸内細菌が大切な役割を果たしていることがわかっています。腸内細菌には、善玉菌、悪玉菌とどちらにも属さない日和見菌という3種類があり、その数なんと100兆個。どの細菌も体にとっては必要で、その理想的なバランスは善玉菌20%:悪玉菌10%:日和見菌70%と言われています。食事や生活習慣の乱れでこの黄金バランスが崩れると、免疫力が低下し、体のさまざまな部分で不調を起こしてしまうのです。
免疫機能をサポートする栄養素

免疫を正常に機能させるためには、腸の環境を整えることが不可欠だということがわかりました。それでは、具体的にどのような栄養素を摂ればいいのでしょうか。
肉や魚に含まれるタンパク質や、ビタミンA、C、E、D、鉄や亜鉛といったミネラル類など免疫細胞を産生・維持するために必要な栄養素のほか、腸内の善玉菌を活性化させるためには、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や水溶性食物繊維が必要です。また、乳酸菌や納豆菌などの微生物が多く含まれる発酵食品は、腸内環境を整える食品の代表格です。
ビタミンA
目・鼻・喉・気管・肺などの呼吸器や、口腔・胃・腸などの消化器を健康に保ち、体の粘膜バリア機能を向上させます。
ビタミンC
免疫細胞である白血球をサポートするほか、体内でのコラーゲン産生を助け、健康的な皮膚と粘膜をつくります。
ビタミンE
強い抗酸化作用で免疫力の低下を防ぐ働きをするほか、血行促進効果もあります。
ビタミンD
免疫機能を促進しながら、過剰な免疫反応(サイトカインストーム)を抑えます。
また、炎症性サイトカインの過剰な分泌を抑え、免疫を正常に機能させる成分として、「ポリアミン」があります。ポリアミンはすべての生物の細胞に含まれていて、細胞の成長や増殖といった生命活動に関与する重要な物質です。体内での生合成能力は加齢とともに減少してしまうため、生体外から補充(外因性ポリアミン)することがポイントです。外因性ポリアミンには大豆や白子、魚卵、オレンジなどに含まれる食事由来のものと、腸内細菌が産生するものがありますが、体内産生にはアミノ酸の一種であるアルギニン(Arg)とビフィズス菌(LKM512菌株)が大きく関わっていることが、研究によってわかっています。
腸内細菌バランスを整える食品と、理想的な食べ方

腸内環境を整えてくれる食品としては、発酵食品であるチーズやヨーグルト、納豆、味噌、しょうゆ、漬物などがあります。これらの発酵食品は、一度に大量に摂取したり、たまにしか摂らないのでは効果が期待できないため、毎日の食生活に取り入れることが肝心です。
同様に腸内細菌のエサとなる食物繊維は、1日に20gの摂取が理想的。昆布、ひじき、わかめなどの海草や、しいたけ、しめじ、なめこ、舞茸などのきのこ類は良質な食物繊維として免疫力アップに有効です。なかでもゴボウやブロッコリーなどの食物繊維には、感染症に対する抵抗力をつける成分も含まれています。
伝統的な日本食は、発酵食品や食物繊維、各種ビタミン・ミネラルがバランスよく摂れる、腸にとって理想的な食事。米飯と具だくさんの味噌汁、海苔と納豆に漬物、焼き魚か卵料理といった和定食を、1日1食は摂りたいものです。
腸内細菌バランスを整える食品と、理想的な食べ方
発酵食品 | 微生物による発酵で分解が進んでいるため、体内での消化・吸収がしやすい食品。ダイレクトに腸内環境改善に働きかけてくれます。 | 主な食品 ヨーグルト 味噌 納豆 しょうゆ ぬか漬 チーズ 酢 みりん 甘酒 |
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水溶性食物繊維 | 食物繊維には「水溶性」「不溶性」があり、どちらも腸の健康維持に効果的ですが、善玉菌のエサになりやすいのは水溶性。 | 主な食品 ゴボウ レンコン リンゴ キウイ 昆布 ひじき わかめ しいたけ しめじ なめこ 舞茸 |
オリゴ糖を含む食品 | 腸内で善玉菌のエサとなり、菌数を増やす助けをします。 | 主な食品 大豆 バナナ キャベツ 玉ねぎ ニンニク アスパラガス |
食事のほかにも、免疫機能をキープする方法はいろいろ

食事以外にも、日常生活のなかで免疫の働きを良い状態に保つための方法があります。今日からすぐに実践できるかんたん健康法を紹介します。
入浴
体の冷えは血行を悪化させ、免疫力や代謝を低下させる要因に。入浴時にはシャワーだけで済まさずに、湯船につかることがおすすめです。40度以下の少しぬるめのお湯に、10分程度つかることで、副交感神経を刺激して心身ともにリラックスさせるばかりか、体の深部まで温めることで、細胞の代謝が活発になり免疫の働きも活性化して、感染に強い体になります。
腕振り体操
かんたんにできる有酸素運動で、血流アップ。腕を肩から大きく振ることで、肩周辺の血行が改善するので、肩コリや首のコリが気になる人にも効果的です。
① 両足を肩幅に開いて立ち、左足を軽く一歩前に出す
② 両ひざを軽く曲げる(後ろ足のかかとを少し浮かす)
③ 「イチニ、イチニ」の掛け声に合わせて、腕を伸ばしたまま肩から振り子のように大きく振る。このとき息を止めず、体もゆっくり上下に動かす
④ 前後の足を入れ替えて、③のように腕を振る
※③~④で1セット。1セット30秒からはじめて、1分、2分と時間を延ばしていき、1日3分が2セットできれば合格です。
ウォーキング
屋外を歩くことで日光(紫外線)を浴びると、体内でビタミンDが産生されます。ビタミンDは魚やきのこ類を食べることでも摂取できますが、皮膚に日光が当たることで体内合成できる量が一番。骨を強くするほか、マクロファージやNK細胞など、ウイルスから体を守るための免疫機能をアップする働きがあります。無理せず短い距離(5分程度)から始めてみましょう。
温活
体内を流れる血液の大半は、おなか(腹腔内)を構成する肝臓や腎臓を通ってから心臓に戻ります。手足が冷えていると、冷たい手足を通ってきた血液が内臓を冷やし、さらに冷えたまま全身に巡ってしまいます。体温が下がると免疫力も低下するため、足湯やくつ下、おしゃれな腹巻などを活用して、手足とおなかを温めてあげましょう。
睡眠
質の高い眠りは、心身の休養のために欠かせないばかりか、免疫機能の増強にも役立ちます。睡眠不足が気になるときは、寝室環境を見直してみましょう。チェックポイントは、寝具や寝室の温湿度、光、音などです。特にスマホやパソコンのブルーライトは脳を覚醒させて寝つきを悪くするので、寝る前30分の使用は控えましょう。
私たちが生きていくために欠かせない食事を、消化・吸収し、排せつしてくれる大切な器官である腸。腸内環境を整えることで、免疫機能を正常に保ち、健康的で生き生きとした生活を維持したいですね。