愛されるブランドには、長年育まれてきた物語があります。
食卓に健康なおいしさをお届けする協同乳業のブランドにも、
豊かな自然の恵みを損なわずありのままに伝えたいという
多くの人々の想いが、幾重にも重なり合い綴られています。
進化し続けながらも、真に価値のあるものは大切に守り通し、
今日まで黙々と語り継がれてきた協同乳業の物語。
その1つ1つに込められた想いをシリーズでお伝えします。
協同乳業物語 04
協同乳業のフラッグシップブランドである「メイトーブランド」のまわりには、いつも笑顔が溢れている。アイス、プリン、ヨーグルト...色鮮やかなデザート類のパッケージを開けると、自然のおいしさがぎっしりと詰まって顔をのぞかせる。五感に響く味わいの深さとともに、食前から食後まで続く楽しい演出。そこには、豊かな食生活を感じさせる新しい工夫が幾重にも施されている。今回は、「ていねいな商品づくり」を大切にする協同乳業ならではの、デザート類の開発秘話をお届けする。
協同乳業は1955(昭和30)年、海外から生産設備を取り寄せ、日本で初めて本格的なアイスクリームの生産を開始。アイスクリームが洋食店でしか食べられない高級品だった時代に、カップに詰めたアイスクリームを大量販売したのだ。その流れの中で誕生したのが、日本初の「アイスクリームバー」。子供たちにとって「アイス」といえばアイスキャンデー(氷菓)であった時代に、新鮮なミルクを凝縮したおいしさと駄菓子屋で手軽に買える値段が人気を呼び、大ヒット商品となった。
やがて1960年、「アイスクリームバー」は新しい魅力を加えた「ホームランバー」として生まれ変わる。アイスを食べ終わった子供たちは、バーに刻まれた焼印を探す。「ホームラン」なら、店頭でもう1本を無料で贈呈。「ヒット」も1塁打から3塁打まであり、ホームランに相当すれば1本もらえる。野球のルールを取り入れた日本初の"当たりくじ"つきアイスクリームバーに、子供たちは夢中になった。
「ホームランバー」の宣伝キャンペーンには、長嶋茂雄選手(当時、読売ジャイアンツ)を起用した。既に大スターとなっていた長嶋選手の協力を得るため、何度も球団と交渉を行った。その後も、「満塁ホームラン」の大当たりを引けば、野球盤やスピードガンなどの豪華な景品がもらえるキャンペーンを続け、「ホームランバー」は日本中の子供たちが愛する超ロングセラー商品に育っていく。
2020年に、「ホームランバー」は発売60周年を迎える。"当たり"を探した子供たちは大人になり、食習慣や市場環境が変わった中での今の子供たちが、その楽しさに触れる機会は少なくなってきた。このギャップを埋めるべく、協同乳業では「ホームランバー」の新しい魅力づくりに取り組む。2018年からは果実等の食感や風味を加えたプレミアム製品をラインアップに追加。味へのこだわりを添えて、大人にも子供にもワクワク感のあるアイスクリームバーとして、「ホームランバー」は再び生まれ変わっている。
生産者と消費者を信頼でつなぐ協同乳業には、"高価で本格的なものこそ、もっと手軽にご家庭でお楽しみいただける商品にする必要がある"という強いこだわりがある。アイスクリームだけでなく、1981(昭和56)年には、日本初の本格的なカスタードプリンの量産化に挑戦した。
プリンには、卵に含まれるタンパク質が熱で固まる力を利用して丁寧に蒸し上げる本格的な「蒸しプリン」と、ゼラチンなどの凝固剤を加えて冷やして固める「ゲルプリン」の2つの種類がある。卵を使う蒸しプリン(カスタードプリン)は、工業化するには衛生管理が難しいとされていた。しかし、新鮮な生乳を扱う協同乳業にとって衛生管理は日常のことであり、添加物を使うゲルプリンよりも卵・牛乳・砂糖を主原料とするカスタードプリンのほうが製造ラインとの親和性も高かった。
自然の素材のおいしさが引き立つ本格的な製法のプリンは、ゲルプリンを食べ慣れた当時の消費者にとって違和感のあるものだった。協同乳業はスーパーで試食を行い、ファミリーレストランにも販路を拡げて、カスタードプリンの味わいを普及した。やがて食生活に豊かさを求める時代となり、手作りの味わいを楽しめる「卵と生乳でつくったカスタードプリン」は、家族の団欒の場に欠かせないデザートとなっている。
なめらかな食感と濃厚な味わい、お手頃な価格で幅広い年代の方に支持されている「メイトーのなめらかプリン」は、強いこだわりと偶然のひらめきが重なって、1999(平成11)年に誕生した。
当初、開発者たちは一世を風靡したティラミスやナタデココに続く新しいデザートとして、フランスのお菓子・クレームブリュレに着目していた。クレームブリュレは、卵と生クリームで作った柔らかなカスタードプリンの上でカラメルソースを焦がしたもの。表面はカリカリ・中はなめらかな食感が、洋菓子店やフランス料理店を訪れた人々を楽しませる。協同乳業はシェフやパティシエの協力を仰ぎ、本格派デザートの量産化に取り組んだ。
最初に商品化されたメイトー「クレームブリュレ」は、柔らかいカスタードプリンに焦がしたカラメルパウダーを別添したもので、やや値段も張り、食べるのも面倒だった。これでは"手軽に楽しめる"商品とはならない。「原価を抑え、100円で購入できる商品に作り直せ」。開発チームに厳命が下された。
その日から、開発チームの長い試行錯誤が始まる。試作品の試食を重ねるうちに、あることに気づいた。「いっそのこと、コストがかかるカラメルパウダーをなくしてはどうだろうか」。生クリームのなめらかなプリンは、それだけで充分な存在感を際立たせている。開発チームは牛乳と卵の素材を引き立てる製法開発だけに集中した。こうして、なめらかな食感と独特の風味を持つ「メイトーのなめらかプリン」が誕生した。素材、製法、食感、そして価格。4つのこだわりが、他社が真似のできないクォリティ感を生み出している。
デザート類の商品開発は、優先するテーマが非常に明確だ。
自然の素材の良さを活かし、本格的な味わいを追求し、手軽に楽しめる商品をつくること。
この3つを実現することにこだわり、開発チームは妥協のない取り組みを続けていく。
時代が求めるおいしさのトレンドを追求するのが世の風潮の中で、一貫して商品づくりの基本を守り続ける協同乳業は、流通チェーンのPB(プライベート・ブランド)商品の開発提案や外食チェーンの業務用商品の供給元としての信頼も高い。一度委託されれば、それがどんなに短納期だろうが、無理のある商品開発だろうが、寄せられた信頼に応えていく。3週間で「かぼちゃプリン」のPB商品開発から納品まで依頼された時には、開発責任者自ら冷食会社に原料の調達を協力要請し、北海道まで赴いてその原料を自らペースト状に加工した。
協同乳業の開発チームは、商品開発の専門家だけで構成されない。企画、生産、研究などの様々な部署のメンバーが素材、製法、価格を詳細に検討し、お客様を魅了するベストな商品を追求する。部署間の垣根をなくし、社外の専門家や協力会社も参加するオープンな環境の中で、新しい発想が次々と生まれてくる。
一流のパティシエやシェフが監修した商品を通して、デザートの味覚や組み合わせ・演出の引き出しを増やし、味のレベルを底上げした。産地の素材を活かした「地域のこだわり素材プリン」が、自然の恵みを楽しむ機会を拡げていく。
"自然のおいしさをそのままに、もっと手軽にご家庭でお楽しみいただけるものを"
こだわり続ける姿勢から、おいしい笑顔の輪が拡がっていく。